11/24(水)に、NAGOYA WOMEN STARTUP LAB. 2021 オープンセミナー【洗濯で海を汚す時代を終わらせる 創業70年のクリーニング店の挑戦】を開催しました。ゲストにSave the Ocean株式会社 代表取締役船長の東本 猛氏をお招きし、サスティナブル・ストーリー株式会社 代表取締役の中島康滋がナビゲーターを担当しました。
きょうは勝川ランドリーというクリーニング店が洗剤のメーカーになるというお話をしていただきました。東本さんは、もともとラグビーのコーチだったそうです。クリーニングに全く興味がなかったが、クリーニング店を営むことになった。コーチ時代から物事を考えるときに、「どんな問題をどう解決するか」ということにこだわってきたそうです。
オーダースーツ店は「洗うな」と言う。これは「問題だ」
ラグビーをやっていたのでオーダースーツしか着れなかった。そのとき、オーダースーツ店からは「スーツはクリーニング屋に出すな」と言われた。スーツを洗いたいのにクリーニング屋に出せないという「問題」を解決するために、クリーニング店の環境を変えることに取り組んだ。道具を変え、職人を育てた。服を着るということは「洗う」ことから逃げられないはずなのに、オーダースーツ店は「洗うな」と言う。これは「問題だ」。この問題を解決することをこれまでやってきた。
勝川ランドリーのメニューには、ジャケット6,270円、スラックス3,300円というものがある。スーツを洗うために1万円近くかかるメニューをつくった。ねらいはオーダースーツ。オーダースーツ店が「スーツを洗うなら勝川ランドリーさんに出してね」と言ってもらえるようなサービスをつくった。
「コインランドリーは暗くて怖いところ」妻の話から、コインランドリー事業が生まれた
「雨の日には洗濯物がかわかない。コインランドリーは暗くて怖いところ。女性が一人では行けない。だから、ストーブの上に干して乾かしている。」という妻の話から、コインランドリー事業が生まれた。17年ぐらい前のコインランドリーといえば、銭湯のとなりで男性がジャンプを読みながら洗い終わるのを待つところだった。当時ではめずらしく、クリーニング店のとなりにコインランドリーをつくり、機械が止まったらすぐに見に行けるように環境を整えたら大流行した。
コインランドリー事業をするようになって、あらたな問題に気づいた
ーー洗濯をするときに洗剤をなぜいれるのでしょう?
汚れを取るためですよね。
ーーでは、汚れってなんでしょう?
汚れには「油」か「水の汚れ」しかない。
ーーー油の汚れと水の汚れをなにで取るのか?
洗剤。
ーーじゃあ、洗剤ってなにがあるのか?
一般的に「石鹸」がある。石鹸は石油からできている。石油からできているので「天然」と呼ばれることもある。合成洗剤はパームヤシ油を主体とした油でできている。つまり、洗剤には「石油」か「油」しかない。水の汚れは水で取れるけど、油の汚れは水では取れない。油の汚れを取るために、「石油で取るか」「油で取るか」ということをしている。
服をキレイにしているのではなく、汚していたんだということに気づいてしまった。
実験をやってみたいと思います。お皿の上に、口紅で3点汚れをつけます。1つ目に洗剤、2つ目に油を垂らして指でなでる。どうなりましたか?2つとも汚れが浮き上がり、手触りも同じような感じになりませんか?洗剤も油なので手触りが同じになります。
洗濯の黄ばみは、汚れを落とそうと洗剤(油)を入れすぎて、すすぎきれていないために、洗剤(油)が服に残って黄ばみます。ぼくたちは、服をキレイにしているのではなく、汚していたんだということに気づいてしまった。
ぼくたちが使っている「海をまもる洗剤」は、油を細かくして水で包み込む洗剤。油を水で包み込むことができる唯一の洗剤で、この開発に成功。この洗剤は、洗濯で海を汚す世の中を解決したいという思いから生まれた。
3つ目の汚れにスプレーボトルをかけてみてください。油が水に包み込まれていくのが感じられると思います。
コロナ禍で晴れ着を着る機会が減りクリーニング屋に服を出さなくなった
コロナ禍により、売上が3、4割ダウンした。家にいるのでスーツを着ない。旅行もない、パーティーもない、忘年会も新年会もなくなり、晴れ着を着る機会が減り、クリーニング屋に服を出さなくなった。
そこで、なにをしたかというと、海を汚さない活動としてビーチクリーン活動を社内でやったり、マルシェに出展するようになった。これまではクリーニング屋で「待ち」の姿勢だったが、出向くようになると、こんなに「いい洗剤」があったんだと知ってもらえる機会が増えた。
小中学校に出向きキャリア教育や環境教育の授業をさせていただいたり、SDGsに取り組む会社への企業研修として、量り売りでゴミを出さない習慣などにも取り組んでいる。
ぼくは環境活動家ではない
いいものを作れば売れると思った。アパレルが認める洗剤を作ればクリーニング屋に服を出すと思った。でも出さなかった。「いいもの」はあるけど、「なににとって”いいもの”」なのかが大事なのだと気づいた。コロナのつぎには、気候変動や水の問題が重要視されるようになる。海外ではすでにデモなどが始まっている。環境を破壊している企業はお客様から選ばれなくなる時代にはいった。
「洗濯で海を汚す時代を終わらせる」から「洗剤で海を汚す時代を終わらせる」
「洗剤で海を汚す時代を終わらせる」を念頭におき、洗剤を開発する研究機関といっしょに、エビデンスを用いながら、どれだけ社会への負荷をかけながら発展しようとしているのかに意見をして、そこに対し提案をして、それを解決していける会社になりたいという思いから、分社化して「Save The Ocean株式会社を立ち上げた。こういう活動を応援していただけるような会社になりたいと思っている。
参加者の声
- 消費者として拝聴し、実際に使ってみたいと思いました。また、経営者としては、自分の事業が地球と共存するために、すべてを解決するのではなく取捨選択しつつ、どこに特化し解決の1つの選択として、商品をお客様に提供するという考えに賛同いたしました。
- 自ら触って体感できるコーナーがあり、より関心が深まりました。生きていく限り環境を壊してしまっているという言葉が身に染みました。
- 登壇者の諦めない信念の理由や、これからの時代の動向も聞けたのがよかったです。
ソーシャルビジネスとしての理念やビジョンの作り方、やり切ろうとする姿勢と実行力、リーダーシップなど参考になることが多かったです。
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NAGOYA WOMEN STARTUP LAB. 2021 オープンセミナー
タイトル:第8回 洗濯で海を汚す時代を終わらせる 創業70年のクリーニング店の挑戦
日時:2021年11月24日(水) 13:30-15:00
会場:リアルとオンラインのハイブリット開催
【リアル】ナゴヤ イノベーターズ ガレージ コラボレーション・エリア
(〒460-0008愛知県名古屋市中区栄3-18-1 ナディアパーク4F)
【オンライン】オンライン(Zoom)
ゲスト:東本 猛氏|Save the Ocean株式会社 代表取締役船長
ナビゲーター:中島康滋|サスティナブル・ストーリー株式会社 代表取締役
申込者:39名
参加者:30名